たちばなとお菓子のものがたり
たちばなとお菓子(かし)のものがたり
はじまりはじまり
むつきくんとかおるくんが
神社の前を通りかかると、
みかんのいいかおりがしました。
見ると、白くて小さい花が
たくさん咲いていました。
「みかんって、むかしはお菓子だったんだって」
ふたりがかおりをかいでいると、
かおるくんがそんなことを言いだしました。
「みかんはくだものだよ。お菓子じゃないよ」
むつきくんはおどろいて言い返しました。
「お菓子だよ。うちのおじいちゃんがいってたもん」
「ちがうって。かおるくんのうそつき」
「なんだと、うそつきじゃないぞ!」
「なんだなんだ、けんかはよくないぞ」
どなり声をききつけた神主(かんぬし)さんが、建物から出てきました。
神主さんはむつきくんたちにみかんが入ったゼリーをくれました。
そして、この神社の神様の話を始めました。
「この神社にはタヂマモリというお菓子の神様がまつられているんだ。タヂマモリは、むかし遠い国から橘(たちばな)の実を持って帰った人でね」
「その橘の実がうえられたのが六本樹(ろっぽんじゅ)の丘なんだ」
そういって山のほうを指さした神主さんは、にっこりわらいました。
「橘というのは、みかんの元になった果物で、むかしはお菓子として食べられていたんだよ」
むかしむかし、大むかし。タヂマモリという男がいました。ある日のこと。タヂマモリは天皇によびだされました。
「食べると年をとることなく、いつまでも生きられる実があるという。その実をさがして持ってきてほしい。」
それは『ときじくのかぐのこのみ』という実で、海の向こうの遠い国にあるのだと天皇は言いました。
たぢまもりは荒れた海をわたり、けわしいい山をいくつもこえて実をさがしました。
春が来て、夏、秋、冬がすぎ、また春が来ても、実は見つかりません。季節がいくつもめぐっていきました。
長い年月をかけ、タヂマモリはやっとのことで、ときじくのかぐのこのみを持って帰りました。
ところが、天皇はタヂマモリが帰る少し前になくなっていたのです。悲しみのあまり、タヂマモリは天皇の後を追って死んでしまいました。
タヂマモリが持って帰った実は、海南市下津町橘本(しもつちょうきつもと)に植えられました。
ときじくのかぐのこのみは、あたたかい土地ですくすくと育ちました。
ときじくのがくのこのみは、今の言葉でいうと橘。みかんの元となったくだものです。むかしの人は橘をお菓子として食べていました。日本ではじめて橘が植えられた橘本神社(きつもとじんじゃ)には、タヂマモリがみかんとお菓子の神様としてまつられています。
ゼリーを食べおわったふたりは家に帰ることにしました。
神社を出ると、むつきくんはかおるくんをそっと見ました。かおるくんもむつきくんをちらっと見ました。
「さっきはうそつき、なんていってごめん」
「ぼくも、どなってごめん」

家に帰るとむつきくんは、お菓子屋さんをしているお父さんとお母さんにお菓子の神様の話をしました。
話を聞いたお父さんたちはびっくっり。
「おかしの神様があの神社にいるなんて知らなかったな」
「それならお菓子でこの町をもっともりあげよう!!」
おしまい
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更新日:2022年02月03日