令和6年海南市文化表彰式

更新日:2024年11月11日

令和6年海南市文化表彰式

海南市の文化の向上発展に顕著な功績があった方を表彰する「海南市文化表彰式」が、令和6年11月1日(金曜日)に海南市役所で開催され、下津町出身で、現在はイギリス ロンドンを拠点に活動されている陶芸家の岩本幾久子さんが文化奨励賞を受賞されました。

岩本幾久子様(右)と海南市長(左)

海南市文化奨励賞を受賞された岩本幾久子様(右)と海南市長(左)

受賞者 岩本幾久子様の挨拶

本日は、表彰いただきまして、誠にありがとうございます。海南市文化奨励賞を受賞させていただき、本当に心から光栄に思っております。

神出市長様、ご来賓の方々におかれましては、ご多忙の折、ご臨席いただき、また今日までの自身のアーティスト活動をこのように盛大に讃えていただきまして、心より御礼申し上げます。

私は、18歳で陶芸に出会い、21歳で陶芸家の坪井明日香先生に弟子入りをさせていただきました。陶芸、土に出会えたのも、本当に奇跡的です。去年の11月に地元の市民交流センターで、個展をさせていただいたときは、陶芸と結婚式を挙げたような気持ちになり、地元の皆さんの温かい応援に、胸を打たれました。

現在は師匠の勧めで留学したロンドンに、そのまま芸術活動の場も移し、23年経ちました。子供達も中学生になり、背中に背負って制作した頃を懐かしく思います。息子も娘も主人の実家ではなく、大自然に囲まれた下津の実家に遊びに行くのを、いつも楽しみにしています。

さて、2年前に亡くなられた坪井先生は、女性が陶芸の窯に近づくと汚れると言われていた時に、人間国宝でイギリス留学経験もある陶芸家、富本憲吉先生に弟子入りを許され、その後、女流陶芸を発足されて、亡くなられる直前まで秋に開催される展覧会の準備をされておりました。陶芸の授業で坪井先生から教わった、富本憲吉先生の言葉が、今も心の奥深くに刺さっています。
「模様から模様を作らず」
これは自身のアート作品の制作にも、ずっと無意識で意識し続けている言葉です。こういったオリジナリティの追求は、自身への問いかけでもあります。

今日は式典後、海南三中に伺い、ワークショップを開催する予定としていますが、運動部の人がやっているような準備運動を、美術部の人にもできないかなと思い、土を使ったアートのウォーミングアップを、大学院時代に卒業論文で書いた箱庭療法の視点でやることになっています。

最後に、私はロンドンで、土を使って制作している自身のことを「セラミックファーマー」と言っています。

両親は下津のみかん農家で、21世紀になった今でもサステイナブル、持続的な生活を営んでいます。

2018年からは、市場で見つけたそろばんや、父親が手作りした農具など、古道具を再利用し、SDGsを意識した作品を制作しています。

数年前にロンドンのnatural history museumの海洋学を研究されている学芸員の方を紹介していただき、環境問題に関したお話を直接伺える機会がありました。その後、骸骨のような目が空洞になった魚がモチーフになり、温暖化、マイクロプラスチック汚染など、環境問題に一投注ぎこむというコンセプトに変化しました。

下津のみかん農家の娘、自然いっぱい、山、川、海、田んぼが遊び場だった、山育ちの私です。これからも私の作品を見てくれた世界中の人に、少しでも環境問題への意識を変えられたらと思い、真摯に制作を続けていきたいと思っています。

本日の受賞をひとつの節目に、これからも益々いろいろな活動に精を出し、海南市の文化の向上発展に貢献していきたいと、決意を新たにしています。 今後とも、ご指導をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

本日は、本当にありがとうございました。

展示作品

展示された作品

式典には、岩本様がご持参くださった海洋汚染問題を提起する魚の作品(左)と、SDGsをテーマとした古いそろばんを再利用した作品(右)を展示させていただきました。

芸術に触れる貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございました。

経歴及び功績

昭和46年海南市下津町に生まれる。

帝塚山短期大学工芸美術史コース及び専攻科にて陶芸を学ぶ。卒業後、大学時代の教授であり恩師の(故)坪井明日香氏に師事し、平成13年に留学のため渡英。カンバーウェル芸術大学陶芸専攻を卒業後、英国王立芸術大学院セラミック&ガラス科を修了。以降、ロンドンを拠点に陶芸家として本格的に活動を始める。

平成5年に女流陶芸新人賞、平成7年には女流陶芸文部大臣奨励賞を受賞。その後海外でも多数の入賞を重ね、令和元年には現代工芸の賞として著名なヤングマスターズ陶芸賞を受賞する。

氏は、ミクロや自然をテーマとした目に見えない世界を鋳込み成形(スリップキャスティング)技法を用い表現することを得意とする。また、「視覚障害のある方々にも、作品の触覚を楽しんでもらいたい」との思いから、棘やドットなど触感が特徴的な作品も数多く手がけ、代表作には、海洋汚染に苦しむ魚を、刺刺しい鱗と空洞の目で表現した作品や、古道具を再利用したアンティーク作品などがあり、陶芸を通じて、環境問題の提起や、SDGsの普及にも貢献している。作品は、芸術やデザインを主題とする英国のヴィクトリア&アルバート博物館のコレクションに加わるなど、日本のみならず海外でも注目を集める。

令和5年には、故郷下津町において個展を開催、母校で講演を行うなど、本市における芸術・文化の振興にも貢献し、今後もグローバルで幅広い活躍が期待されている。

岩本幾久子様と作品

岩本 幾久子(イギリス ロンドン・昭和46年生まれ)

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