下津蔵出しみかんシステムとは

傾斜地という不利な状況と人間の知恵を融合させた
持続性の高い農業システム

画像:みかん畑イメージ

1.食料、生計の保障

このシステムの大きな特徴は、「収穫したみかんを土壁の蔵で熟成させてから出荷する」という点です。この工程により、糖度を高めるとともに、収穫の効率性を高め、さらに他産地が出荷しない時期の出荷が可能となります。
また、多様な品種を栽培しており、1年を通して安定した農業を営むことができます。みかんジュースの生産や、観光農園などの6次産業、急傾斜地を活用したびわやキウイなどの複合栽培も行っており、特にびわは県下1位の出荷量を誇るなど、下津町地域の基幹農作物となっています。

2.農業生物多様性

山の尾根からため池、川、海に至る連環を形成し、多様な動植物の生育環境を保全しています。雑木林やため池の整備により、メジロやミツバチ、ホウジロなどの野生動物が多く集まります。この野生動物に、びわの受粉や害虫駆除の役割を担わせることにより共生関係を築いています。
また、下津湾の栄養分豊富な海藻を肥料に活用したり、海水に含まれる豊富なミネラル分が雨水となるなど、多彩な自然環境を余すことなく活用しています。

3.地域の伝統的な知識システム

山頂や急傾斜地に雑木林を配置することによる水源かん養の機能を持たせつつ、伝統的な石積技術による急斜面での足場確保・耕地面積の増加などによりみかんの生産性を向上させています。これらは崩落防止などの災害耐性を向上させています。
また、みかんを貯蔵する蔵は畑の土や雑木林の竹、木などを利用して農家が建設しており、下津町地域で守られている特有の技術となっています。

4.文化・価値観、社会組織

みかん栽培で用いた石積技術は、高い排水性・雨風での浸食が少ない・雨水の流加速度低下などの効果があり、家屋等の資材や道路の法面といった公共財にも盛んに応用されており、漁村、農村集落の形成に貢献しています。
天皇の命により田道間守(たぢまもり)が約1900年前にみかんの祖となる橘を中国から持ち帰り「六本樹の丘」に植えたとされていることから、下津町地域は日本のみかん発祥の地とされています。また、砂糖の入手が困難だった時代、橘をお菓子として食べていたことから、お菓子発祥の地ともされています。この田道間守は、みかんの神様・お菓子の神様として橘本神社に祀られており、毎年4月に全国銘菓奉献祭(菓子祭)、10月にみかん祭が開催されるなど、地域に欠かせない存在となっています。

5.ランドスケープ及びシースケープの特徴

西部を海に、それ以外を山脈に囲まれている下津町地域では、傾斜地・段々畑・びわ園・みかん園・雑木林・池・海など、ほかの地域でも類を見ない多彩な景観が形成されています。多様な品目が織りなす四季折々の風景は、厳しい自然条件を克服するための努力の賜物と言えます。

出荷品目一覧

画像:出荷品目一覧

下津蔵出しみかんシステム 概要図
画像:概要図

みかん
びわ
キウイ